熊スプレーの購入を検討されている方、誤射や暴発の懸念から購入を迷われている方は多いことでしょう。
何より僕自身がそうでした。
結局カウンターアソールトを購入した後も、誤射や暴発の可能性に関しては細心の注意を払う必要がありました。
さて、そんな僕のカウンターアソールトは、有効期限切れから2年が経過しました。
そこで、熊スプレーについて再考察をしたところ、こんな事実に直面しました。
- カウンターアソールトは動物虐待に値すること
- ツキノワグマ専用の熊スプレーが存在したこと
- それは人体にも安全なものであったこと
- 対ヒグマ用より安価で軽量であること
以前の購入時では考えもしませんでしたが、詳しく調べていると、やはり利点も多きことに気が付きました。
今回の記事では、カウンターアソールト(対グリズリー用スプレー)と催涙スプレー(ツキノワグマ用)との違いを詳しく解説していこうかともいます。
誤射・暴発の懸念、人体への影響、本当に熊スプレーは必要なのか?など、購入に迷っている方に対しては、より理解の深まる内容になっているかと思います。
熊スプレーはツキノワグマに対しては虐待だった
登山やキノコ狩り、渓流釣りといったアウトドアを毎年行うことで、だんだんと熊に対する感じ方は変わってきました。
以前であれば、ただ熊を恐れていましたが、熊を見たことが無かったため無理もありません。
今は何度かツキノワグマを目撃していますが、どの子もビビりだということです。
至近距離で人間と相対して、全速力でビビって逃げる子
自転車走行中に遭遇して、立ち上がって驚く子(そのあとすぐに逃げる)
山小屋の方をチラチラを確認しながら、遠くでハイマツを食べている子
どれも遠くor一瞬の出来事なので、写真を撮ろうとしてもそんな隙さえなかったです。
ツキノワグマの生態
- 生息地:九州と四国一部を除く33都道府県
- 食料:雑食、新芽・昆虫・果実・木の実が主食
- 大きさ:平均120〜190cm 体重60〜130kg
九州や四国を除けば、登山・渓流釣り・山菜狩りなど山の趣味を行う方にとっては、そのうち目撃や遭遇はあると思います。
実際目撃した際に感じるのですが、思っていたより大きいとは感じません。
太った大型犬や、毛の長い犬は熊に見えるくらい。
どのブログや目撃談を見ても、たいていツキノワグマはビビりで自分から逃げていくと記載がされています。
熊スプレーが必要ないというわけではない
秋田県鹿角市十和田大湯の熊取平と田代平で、タケノコ採りの男女が次々にツキノワグマに襲われて4人が死亡し、4人が重軽傷を負った。
読売新聞
熊ってのは頭がいいからなのか、スズメバチとかマムシなどと違った怖さも持っている。
普段はビビりの動物ではあるが、人間に慣れてしまうという一面を持つ。
それは、人を襲うという点でも「慣れる」ということなのだろう。
癖がついた子は、人を襲うようになったり鹿を襲って食べるようになる子も、一定確率で現れるようである。
このように、人を襲うことに慣れた熊との遭遇が危険なケースが一つ。
もう一つは時期的な問題である。
特に、春は子連れのクマの出没が多い傾向にあります。母グマは子グマを守るため、襲ってくる危険があります。子グマを見かけたら絶対に近づかないでください。
ながおか防災ホームページ
これからの初夏は、若い個体が集落近 くまでさまよい出てくる可能性がありますので、
ツキノワグマから身を守るために
十分注意してください。
冬眠前の準備期間(9月~11月)は、危険な時期として認識されています
ウェザーニュース
といっても、春の子連れ、初夏の活発性、秋の冬眠準備など、ツキノワグマの被害に対する注意喚起はいつでもされていますね(^^;
要するに普段はビビりだけど、クマの気分や子連れ問題・活発な性格など、条件によっては危険な子になるということに変わりはありません。
至近距離で出会った熊が、運悪く暴君だった場合の対策として、熊スプレーの所持が必要になると言えるでしょう。
強力なスプレーはツキノワグマに対しての虐待行為
ここからが本日の本題。
僕の所持するカウンターアソールトを筆頭に、日本でも多く流通される熊撃退スプレーのほとんどが、虐待レベルに強力なアイテムだったということです。
そしてそれは、同時に人間に対しても危険なものでもあります。
逆に熊よけ(ベアー)スプレーを中・小型動物(ツキノワグマ、野犬、猪、猿等)に使用した場合は成分性質が強すぎるため過剰な苦痛を与える事になり、動物虐待となるばかりでなく、生態系の破壊や人に対して過剰な攻撃性を持つようになるなど生態系のバランスを狂わせる恐れがあります。
日本護身用協会
生息地が減少し、クマとの遭遇が危険視されるようになってきました
同時に、熊スプレーがツキノワグマにとっても過剰な道具であるということも、注意喚起がされています。
ここからは、害の少ないものと有害なスプレーについての違いを詳しく紹介していきます。
成分の違い
簡単に言えば、ツキノワグマ用は催涙スプレーに分類、グリズリー用は熊除けスプレー(ベアスプレー)になります。
催涙スプレーに該当するとはいっても、使用用途はツキノワグマ用。
見た目も他の熊スプレーと変わりありません。
催涙スプレー(ツキノワグマ用)
人体に対しては「目」を狙う、嗅覚の鋭い動物に対しては「鼻」が有効的とされます。
強い刺激により、目を開けていられない状態になり、成分を除去してもすぐには症状は改善しません。
ですが、時間経過とともに症状は軽快し、冷水により症状が緩和するという特徴があります。
主成分はOCとされており、唐辛子系の成分でできています。
OleoresinCapsicum(オレオレシン・カプシウム)の略。唐辛子などから抽出する辛味成分。効果が強く即効性があり動物全般に使用可能。自然由来の植物性成分であり微生物分解性なので環境への影響がない。
日本護身用協会
熊除けスプレー(グリズリー用)
人に対する使用は全く想定されておらず、皮膚のただれ・視力低下や失明の危険があります。
また、水での洗い流しが困難であり、かかってしまった場合の対応が遅れます。
主成分としては同じく唐辛子系のOCを原料としています。
カナダでは、催涙スプレーを「ペッパースプレー」と呼び、熊撃退用を「ベアスプレー」と分類し、販売や扱いも法律上で厳しく限定されているようです。
ただし日本では、企業や国民を筆頭に(僕もそうでした)違いを認知しきれていない現状にあるようです。
ここからはわかりやすく、ツキノワグマ用を「ペッパースプレー」、グリズリー用を「ベアスプレー」と呼ぶことにします。
成分の違いは?
先ほど紹介したOCと呼ばれる成分は唐辛子由来であり、ペッパースプレーとベアスプレーでは何が違うかを紹介します。
水性か油性か
ペッパースプレーが水性に対して、ベアスプレーが油性になります。
どちらが強力かは、なんとなくで理解は可能でしょう。
ベアスプレーは油性であるからして、かかった場合の水洗いが困難であり、処理も面倒です。
SHU値が200,000以上か未満か
まずはSHU値についての紹介になります。
後半のスプレー代用のお話でも触れるので、軽く目を通しておいてください。
SHUはスコヴィル・ヒート・ユニット(ScovilleHeatUnits)の単位であり、唐辛子の辛さの度合いを数値化したものです。
日本護身用協会
SHU値は、成分を1000倍の砂糖水で薄めた場合に辛さを感じなくなる値とされています。
詳しいことはそこそこ、数値が高ければ高いほど辛い・刺激を感じると思っていただいて良いです。
200,000のものは2,000のものからすると、さらに100倍に薄める必要があるということ。
そしてちなみに、タバスコのSHU値は2,000だとか。
ペッパースプレー | ベアスプレー | |
---|---|---|
溶剤 | 水性 | 油性 |
SHU | ~199,999 | 200,000~ |
安全性 | 安全 | 危険 |
つまりベアスプレーは、タバスコの100倍の刺激のスプレーということ。
価格は安くて良心的
ペッパースプレーとベアスプレーは価格にも差があります。
日本護身用品協会でも推奨されている、ツキノワグマ用のペッパースプレーと、その他油性のベアスプレーの価格を見てみましょう。
Amazon価格 | |
---|---|
ポリスマグナム (ペッパースプレー) | 5,720円 |
カウンターアソールト (ベアスプレー) | 10,800円 |
フロンティアーズマン (ベアスプレー) | 7,800円 |
ペッパースプレーである、先ほど紹介したPOLICE MAGNUMのスプレーは、有名品の半分程度の価格と良心的です。
正確には、携帯用として小型サイズが展開されていることが価格低下の由来にもなっています。
小型で携帯性に優れる
先ほども申しました通り、POLICE MAGNUMのペッパースプレーは携帯用の小型サイズが出品されています。
相手がツキノワグマ想定なので、スプレーサイズも小さくなって当然かもしれません。
僕もカウンターアソールトを携帯して登山に行くことは多々ありましたが、邪魔に感じることは結構あります。
普通のスプレーより丈夫な分、ボトル自体が重いことも理由の一つです。
重量 | 価格 | |
---|---|---|
ポリスマグナム(小) | 163g | 5,720円 |
ポリスマグナム(大) | 250g | 8,470円 |
カウンターアソールト | 230g | 10,800円 |
フロンティアーズマン | 258g | 7,800円 |
ついでに価格も記載しましたが、ポリスマグナムは小型のものがあること自体がメリットとも言えます。
こんな風にわざわざホルスターに入れなくても、ポケットに全然入りそうです。
人間に当たっても安全
安全とはいえ、ペッパースプレーも「無害」ではありません。
催涙スプレーの類ですので、誤射はするものではないですね。
安全かどうかは、洗い流せるかどうかの違いになります。
その点で「水性」のうすめ剤(溶剤)のペッパースプレーは近場の川や池、携行する「ペットボトルの水」などで比較的容易に洗い流すことが出来ますので、熊も人間も「油性」と比較すると格段に「安全」です。
TMM on-linestore
このように、最悪暴発しても手持ちの水で何とかなる。
という「安心」ですね。
ベアスプレーの怖い暴発の可能性
怖いのは暴発・誤射です。
暴発の確立こそペッパースプレーもおナシですが、暴発した際のダメージと対処が違います。
Twitterで「熊スプレー 暴発」と検索しただけでも、結構な件数がHITします。
熊スプレー、本当にヤバいです。
— JUN (@BumpieGG) February 26, 2022
咳は止まらない鼻水は出る、粘膜に付くと結構な時間ヒリヒリ感が続く
発射して時間が経っても周りを漂ってる
いや、こんなん掛けられたらヒグマも逃げるって
暴発で学ぶ熊スプレーの威力….🙃
藪こぎしてたら熊スプレー引っ掻けて暴発させてあ~ヒリヒリする~って歩いてたらクロスズメバチの巣を踏んで刺された。
— ムシオイビト (@momi_age_p) August 10, 2021
まさに泣きっ面に蜂。
これはあくまで「熊スプレー 暴発」だけなので、「誤射」とか商品名で検索すればもっと出てきます。
人体への苦痛のみならず、こんな事例もあります。
玄関で熊スプレーが暴発したーーー!
— yukitohana (@shrikeinatree) January 25, 2022
壁が唐辛子色に染まっていくら拭いても取れないよ😇
暴発した瞬間に居合わせなかったのに咳と鼻水が止まらない。
あと、うっかり目を擦ったら終わる。 pic.twitter.com/qeHG9j5q1k
人体でもそうですが、壁にやってしまった場合の対処も困難です。
なんせ「油性」ですので。
ツキノワグマに対する虐待性もありますが、人体への影響や暴発時のリスクを考慮しても、水性のペッパースプレーを選ぶ理由は大きいのではないでしょうか。
ヒグマに対しては「代用品」としてのペッパースプレー
ペッパースプレーはあくまで「対ツキノワグマ用」もしくは「その他動物や悪人集団用」とされており、日本護身用品協会からも、ヒグマに対してはベアスプレーが推奨されいます。
ヒグマは分類上グリズリー種とされていますので、ツキノワグマとヒグマの間で線引きが為されます。
ここからの文章は、論文で書かれていない僕個人の意見になります。
過信はしないよう、ご自身での判断も加味してくださるようお願いします。
ポリスマグナムのペッパースプレーは181,000 SHUと、タバスコのSHU(2,000SHU)の90倍相当に値します。
この時点で、ヒグマに対しても「完全無効」とは到底思えません。
ペッパースプレー販売元のTTMからも以下のような文言が付け足されています。
ベアースプレーの「ガードアラスカ」はTMM熊よけスプレーの実効SHU 181,000 SHUとほぼ同等の実効SHUが194,000 SHUですが、催涙剤成分であるオレオレシン・カプシウム(OC)原液のうすめ剤(溶剤)が油性ですので、クロクマ(ツキノワグマ)には使用不可です。
TMM on-linestore
このニュアンスから考えるに、「油性であるベアスプレーも194,000SHUだけど、水性のうちの商品は同等の181,000SHUだから結構強力だよ!!」って感じに聞こえます。
僕もこれには同意で、数値はあくまで刺激の強さです。
同等の数値なら、喰らった瞬間の刺激は同等ではあるが、それが長引くか時間経過で流れるか・水で流せるか流せないかの違いになるものだと思います。
であれば、ヒグマであっても撃退させてしまえば、長時間苦痛を与える必要はないのではないか?
と思います。
そもそも熊は臆病者ですので、あちらから逃げてしまえば無問題です。
熊スプレーを所持しない人が多い中、ペッパースプレーであっても所持するだけで、心の安心になることは間違いありません。
注意したいのは持続時間の違い
ここで注意したいのは、持続時間の違いです。
以下の表は、それぞれの飛距離と持続時間を示したものになります。
飛距離(無風) | 噴射時間 | |
---|---|---|
ポリスマグナム(小) | 9.5m | 約0.5秒×4回~5回 |
ポリスマグナム(大) | 10.5m | 約1秒×8回 |
カウンターアソールト | 9m | 7.2秒 |
飛距離にはそう変わりはありませんが、噴射時間に大きく差が出ます。
軽量コンパクトの弊害ですが、内容量が圧倒的に少ないというのが欠点です。
一応、クマに当てる時間は0.5秒で十分な時間とされていますが、使用時間は大きなサイズと比較しても3~4分の1程度しかないことに注意したいです。
パニックになり、すぐに消費してしまわないイメージを持つことが重要かと思います。
持続時間さえ気にすれば、熊スプレーの最適解
熊スプレーの購入検討をされている方は、あくまで護身用という使い方を想定されているかと思います。
ツキノワグマに対して十分な性能を持ち、刺激量としてはヒグマに対するベアスプレーと同等の攻撃力を持つペッパースプレー。
最低限の護身用として、軽量性を意識するならば小型
心に余裕を持つために、容量もベアスプレーと同等品が良ければ大型を選ぶのも良いかと思います。
いずれにせよ水性のペッパースプレーは、おそらく日本で使う「熊スプレー」としては最適解かと感じました。
中型とされているのは、ツキノワグマ用
メーカーで言う小型はあくまで対人用になります。
容量と心に余裕を持たせたいなら大型かな。