風化した「憧れ」に挑みなおす、初冬の3000mの頂

当ページのリンクには広告が含まれています。
  • URLをコピーしました!

剱岳への登山を決めてから、はや何年経ったろう?

かれこれ連休を決めては、4回ほどは予定が頓挫している。

日頃の行いのせいだろうか?

それとも呪われているのだろうか?

8月まで尾を引く長梅雨や、図ったかのように訪れる台風に、剱岳からは来るなと言われているようだった。

憧れだった2999mの頂きは、いつしか「そのうち行けばいいか」程度にまで脳内ランクが落とされた。

悲しいなア

できれば憧れが憧れだったあの頃に、登っておきたかったな。

行くとか行かないとか、どうでも良くなっていた僕に、思わぬお誘いが。

「シーズンOFF一歩手前に、早月行っとく?」

なるほどなるほど!

試練も憧れも風化したのなら、試練と憧れの時期を選べばいいのじゃないか!

目次

11月23日 剱岳早月尾根

スタートはAM 3:00

車の中で1時間ほどの仮眠をとり、まだ動かぬ体を無理やりに動かし始める。

SNSで見覚えのある石碑も、この時間に見ると感じ方も変わるものだ。

登山口の標高は700mにも満たない。

北ア三大急登とも言われる尾根を夜な夜な登れど、振り返った景色は町明かりが近い。

「どうか常識的な時間帯に帰れますように」

まだ目覚めない体では、早くも帰りの風呂の事しか考えられない。

小屋前辺りから、ようやくヘッドライトが不要に。

今回Nikonのフルサイズは留守番。

軽量化のためと苦渋の決断をしたのだが、pixelとInsta360ではやはり物足りない。

やはり持ってくるべきだったか…

今回の写真については、引率者のtbsのSONYと、自前の軽量カメラを使っている。

それにしても剱岳の稜線は長い。

遠くから見た時より何倍も長く感じるのは、この尾根だからか?雪だからか?

なんにせよ、日の出とともに気持ちも体も目覚め切ったので、ここから登頂までの間はしばらく元気だ。

軽量化のためと持ってきた新機材の調子も良い。

Insta360の新型も、なかなかいい味を出してくれるじゃあないか。

見た目は完全な雪景色に対しても、秋らしい雲の造形。

この日は11月にしては暖かく、インナーと薄いシェル一枚で十分な程。

景色とは裏腹に、これで良いのかと思うほどに快適な一日だった。

快適な登山もそろそろここまで。

いよいよ核心に入りつつある。

しかし慣れなのか?

気づかないうちに僕も、当然のようにこのような場所をスルーできるようになっている。

今こうして見返すと、数年前の自分では全く想像もつかない状態だ。

全く時間と経験とは恐ろしいもので、自分が思いもしなかった状況まで、自分を引っ張り上げることがあるのだ。

とはいえ今回の核心、鎖もわずかに見えている所があり、雪の状態もすこぶる良好。

幸運ながら、、、

いや、残念ながら先行者のトレースも用意されていたので、正午ほどに山頂へ到着。

ここからはボーナスタイム。

心行くまで剱岳の山頂を楽しみ、持ってきた「良い」カメラ達で遊ぶとしましょう。

さすがはGoogle様、スマホ端末でもかなり楽しめる。

ここ剱岳は、自分が思っていたよりも周囲に山があるらしい。

そしてこの日の空気の透明感と言ったら、信じられないほど。

遠く北ア南部、笠ヶ岳や槍ヶ岳は、手前の稜線と間違うほどにはっきりと見える。

富士山はシルエットのみならず、雪の状態まで分かる始末。

良い日に来たようだ。

こちら360度カメラも、コレでしか撮影できないような画が狙える。

二人同時に撮影できるのは良い所だ。

とはいえやはり一眼レフ。

谷や尾根をはっきりさせる陰影、雪の質感、日の当たり具合…

敵うはずがない。

次は絶対に留守番などさせるものか。

軽量化などと、弱気さを見せた己を反省しなければなるまい。

風化した2999mへの憧れは、11月という季節をもって、数年越しに完遂できた。

最も、この季節にしか体験できない、おおよそ3000mの頂きを踏めたのも嬉しいことだ。

ひとしきり山頂を堪能した後は、もう一度800m以下まで下らなければならない。

それでも危険と判断される箇所は、ロープを出してもらいながら、慎重さを忘れないのが彼だ。

僕一人や友人と二人なら、サクサクと行ってしまうだろう。

自分よりも下の者を引率し、死の間際を見た人はやはり違うなと感じた。

まだ小屋にすら着ていないというのにも関わらず、11月の日は暮れるのが早い。

既にカラスが飛びそうだ。

秋の雲も遠く東に流れていき、一日の終わりを意識させる。

どうやら明日からこの辺りは荒れ模様。

ベストな頃に来れてよかった。

完全に日は暮れてしまったが、小屋までこればこっちのもの。

標高差残り1000m以上はあるが、後は下るのみ…

あア

早く風呂に入りたい。

下山は18:00

完全な闇になってしまったが、まア

常識的な時間に下山することが出来て何より。

これで数年に及ぶ、僕の剱岳への憧れは、経験として懐にしまい込むことが出来ました。

暖かくもあり、先行者もあり、状況も最高の状態。

試練と呼ぶには、ちと、ストレスが足りなかったかもしれません。

暗中に始まり、暗中に終わる、15時間の行動を試練と呼ばないのとすると、一体何を試練と呼ぶのか。

数年前と比べると、間違いなく感覚が狂っていることは否めない。

それにしても、この日小屋前にもう2泊すると言っていた、テント泊の若者グループは大丈夫だろうか?

2日間大荒れをしたようだが…

彼らにとっては間違いなく試練が訪れそうな予感。

無事だといいな。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次