GORE-TEX、○○テック、○○ベント、、、
防水透湿素材は色々ありますが、混在して良く分からない状態になっていると思いますので、○○テック系11種類を比較してみました。
そんでもって今回は直感的に分かりやすいように、サムネにあるような感じでパラメータにしてみました!
防水透湿素材とは?
防水透湿素材は、防水するけど透湿する素材の事。雨は防ぐけど、蒸れないっていうやつですね。
という基本的な事、調べればどこにでも書いてあるので、まずは簡単に解説してきます。
ナイロンとナイロンに挟まれる
防水透湿素材は、これらレインウェアそのものを指してはいません。
表面はただのナイロンであり、裏地も多くがただのナイロンです。もちろん表面は撥水加工がされていて、丈夫にするために密度も高く編み込まれています。
防水透湿素材はどこにあるかというと、このナイロンとナイロンの間に挟まれています。
なので基本、レインウェアのラミネートをめくるなどしないと、普通は見えません。
今回はこの真ん中の素材のお話です!
水は通さないけど、水蒸気は通す
とりあえず簡単な仕組みとして、水の紹介から。
水には表面張力というのがあり、分子同士はまとまろうとします。肉眼レベルでは分かりませんが、分子レベルで言えば水は結構大きい分類です。
水蒸気は一個一個が小さいです。
ですので防水透湿素材は、分子の大きい水は通れないけど、分子の小さい水蒸気は通すという仕組みらしいです。考えた人凄い!
風は通さないけど、空気は入れ替わる
ゴアテックスを代表とする防水透湿素材は、風を通さないから防寒着としても重宝しがち。でも実は、空気を通そうと思えば通るのですよ。
ゴアテックスのジャケットを水に沈め、丁度てるてる坊主を作るみたいに中に空気を閉じ込めます。それをギュッとつぶそうと圧力をかけると、実は空気は漏れていきます。
ですのでゴアテックスは空気を通さないイメージですが、実は空気の分子というのはちゃんと通るのですよね。
あくまで圧力が必要なので、風なんかは防ぎますし、このシステムが丁度良いのだと思います!
では、続いてメインの、防水透湿素材について解説を始めます!
防水透湿素材の内訳
防水透湿素材は各メーカーが付けた名前のが沢山ありますが、実は大きく分けると4種類になります。
- ePTFE
- 疎水性多孔質PU
- 親水性無効室PU
- ナノファイバー
聞きなれない方にとっては既に意味が分からないと思いますが、ここは頑張って理解した方が良いと思っています。
逆に言えば、この4種類をハッキリさせてしまえば、今後はもう大丈夫。自分に合った防水透湿素材が選びやすくなるはず!
ちょっと難しい内容になりますが、頑張ってください!
ePTFE(テフロン系)
ePTFEっていうと難しくなるので、テフロン系でいいです。でもって、=ゴアテックスで2024年までは良いと思います。
ePTFE=テフロン系=ゴアテックス
ePTFEは延伸ポリテトラフルオロエチレンの略。
e=伸びる(エクステンド)
PT=ポリテトラ
FE=フル…
ようするに、伸びる感じのポリテトラです。意味が分からないとおもうので、伸びる丈夫なテフロン素材でOK。
ゴアの創設者である、ボブ・ゴアさんが、どうにかこの強い素材を加工したいと思っていたのですが、上手くいかず。ある日思い切って伸ばしてみたら、意外と加工できることに気が付きます。
テフロン系なので水を弾くし丈夫だし、ええやん?ってなったので、ああしてこうしてゴアテックスの誕生。
これがざっくりしすぎたゴアの誕生秘話です(笑)
で、上手いことそれを加工して、今日のゴアテックスに至ります。
テフロンと言えば皆さん何を思い浮かべますか?
フライパンですよね。ええ、丈夫です。熱にもあれだけ強くなる素材ですので、それはもう非常に強力で、耐久性も高いです。本来の目的は「弾く」です。
弾く素材を先ほどの「水と水蒸気の分子サイズ」の丁度のサイズに変形させると、水は通さず水蒸気を通すという両方の特性を持った生地が出来上がります。
だからゴアテックスは防水して、透湿するのですが、テフロンなのでちょっと硬いゆえに、シャカシャカするのだと思います。
テフロンなので丈夫で長持ちってのも、イメージとピッタリです。
ですがちょっと問題がありまして、フッ素化合物ゆえに規制対象になりつつあるのですよね。
代わりの素材として、ePEという素材に変わるとのことで、おそらく2025年の欧州規制の後にはePTFEを使用したゴアは消えているかもしれません。
それに、Patagoniaではいち早くePT製ゴアテックス素材を使った製品が出されており、さすが環境配慮のPatagoniaって感じがします。
一応ここではePTFEで覚えて頂きましたが、今後ePTはどんな性能を見せてくれるのでしょうか?
2025年以降のフッ素化合物規制が楽しみだったりしますね。
疎水性多孔質PU
ゴアテックスとよく似た素材として、最近増えているのが疎水性多孔質PUという素材。
有名なのはMILLETのティフォンシリーズとか、多分ですがゴアウィンドストッパー辺り。
「疎水性」なので水を受けつけず、
「多孔質」なので穴が開いていて、
「PU」なので素材はポリウレタンなのが分かります。
こっちはツブツブ穴が開いていますが、この穴には水は通らず、穴から湿度は抜けていく構造。
さっきのゴアの写真はアミアミですが、伸ばせば成形できるのがゴアテックス(ePTFE)ですのであんな感じに。
コッチはポリウレタンなので、素材としては発砲します。作り方は詳しく知りませんが、素材的には発砲して小さな穴を形成しているのではないかな?
と、勝手に解釈しております。
ポリウレタンは柔軟な素材です。ですのでゴア(ePTFE)と比較して、ストレッチ性があるのが付属するメリットです。
ですがPUは加水分解でも有名な素材です(Xパックとかコーティングしかり)。比較してゴアテックスが耐久有るのは、PUのこうした弱点故とも言えそう。
湿式技法で作られる厚み30~35μmのポリウレタン超微多孔フィルムです。そのなかには、連通した超微細にして均一な気孔(0.3~3μm)が無数(約50万個/平方インチ)に存在し、この穴を通して蒸気を逃がします。気孔が微細なるが故に耐水圧も非常に高く、蒸気透過性と防水性の相反する機能を併せ持っています。
テックワン株式会社
親水性向孔質PU
4つの中で、唯一全く穴の開いていない、ちょっと変わった方法を取るのが、親水性無孔質PUです。
今までは水を弾いていたのに、
「親水性」なので水を含み、
「無孔質」なので穴は無く、
「PU」なのは一緒です。
乾式技法で作られる厚み約20μmのポリウレタン無孔フィルムです。
テックワン株式会社
非常にうすく、ソフトでしなやかなフィルムですが、防水性、防風性、透湿性に優れています。無孔フィルムの透湿性の原理はフィルム内部の親水基にあります。ウェア着用時に発汗すると、ウェア内部の蒸気濃度が高くなります。するとこの親水基が水分を取り込み蒸気濃度の低いウェア外部へ移行させるのです。
分かりやすい箇所を太字に変更しておきましたが、親水性無孔質PUの効果は「蒸発」みたいなイメージでしょうか。
水蒸気を吸着し、それを吸って外に出す感じらしいです。と、聞こえは非常によろしく効果もありそうなものですが、もしかしたら思ったようには反応してくれないかもしれません。
というのを、ちょっと後で解説します。
ナノファイバー
見るからに隙間の多そうな素材ですね。これはナノファイバーという素材で、「ナノ」レベルのPU繊維が重なってできています。
最も透湿性が高い分類で、通気性もちょこっとだけあるという、最近流行りの素材。
あちらはポリエチレンですが、雰囲気はタイベックシートとよく似ていますね。
こちらはフォックスファイヤーの動画ですが、1分程度のところで空気が良く抜けているのがわかります。比較対象は多分ですが、親水性無孔質PUかと思われます。
イメージ的には疎水性無孔質PUのさらにダイレクト通気バージョンで、より透湿性が高い部類。
ノースのFUTURELIGHTが有名。
【比較内容】素材それぞれの特徴
透湿性の実験について触れたいところですが、さすがに疲れたと思うので、メインコンテンツに移りますね(笑)
A-1法とかB-1法とか、詐欺みたいな数値が書いてあるウェアの実態に関しては、とりあえず後に回します!
ここでは直感的に分かりやすく、グラフみたいに紹介していこうかと思います!
- 耐水性
- 透湿性
- 耐久性
- ストレッチ性
- 価格帯
で、今回紹介する防水透湿素材がコチラ↓
- GORE-TEX
- Tetratex
- ティフォン50000
- エバーブレス
- FUTURELIGHT
- パーテックスシールドエア
- H2NO
- ハイベント
- オムニテック
- ドライテック
- ベルグテック
太字にしておいた奴が、今回しっかり目にパラメーターみたいにしたやつです。
パラメーターといっても、なんとなくわかりやすくやっただけですので、なんとなくそんなもんかで見ておいてくださいね(笑)
ePTFE系
まずはテフロン系のePTFE素材から行きましょうか。
テフロン系ゆえの耐久力の高さと、絶対的な耐水性に関して言えば、他の追随を許しません。
といっても、eVentを日本で見かけなくなった今、ePTFE素材は実質GORE-TEXのみ。
もしかしてフッ素系ゆえに、フッ素フリーの流れで規制が始まっているのかもしれません。これは傾向から推察する妄想ですが。
GORE-TEX
言わずと知れた絶対王者。ゴアテックスよりも透湿性がある素材もありますが、耐水性はコイツが絶対的。
透湿性に関しても、A-1法でもそこまで機能を下げず、バランス良く仕上がっています。
とはいえ圧倒的なのは価格も一緒で、軒並み財布に痛い。ゴア使って優しいんはモンベルくらい。
それでもネームバリューが高いためか、信頼性ゆえか、これを搭載すれば売れるからか、アウトドアブランドはこぞってコイツを使います。
余談ですが、ゴアテックスの数値をなんとなく知りたい場合は、モンベルが数値を暴露してくれているので助かります。ただしB-1法ですが。
テトラテックス
簡単に言えばゴアテックスの別会社バージョンと言ったところで、ドナルドソンという聞いたこともない会社のePTFE素材。
聞いたことは無いんですが、歴史も品質も確かであり、性能もしっかりしています。
耐水性は公式値よりも少し低くかかれていた(20000~50000mm)ので、一応4にしておきました。
とはいえ使っているのは、SETOUTかジョンブルくらい。僕はスポーツショップのヒマラヤで見かけました。
正直ゴアテックスと比べると、同じePTFE素材なのに安すぎるので、はっきり言って超お買得だと思っています。
もっと流行ればいいのに!
僕たちにGORE-TEX以外の選択肢をっ!!(財布が軽い!)
疎水性多孔質PU系
続いては疎水性多孔質PU系素材。
ちゃんとそれなりの防水をして、透湿性はバツグンに高いものも多い。それでいてストレッチ性が効いて、GORE-TEXよりも安いとあれば、そりゃあ人気が出ますわ。
ちょっと心配なのが加水分解ですが、最近のは結構強いんですよ。
あまりにひどい豪雨以外だったら、耐水性もコレで十分だったりしますので、最も現実的な選択と言えるかも。
TYPHON 50000(MILLET)
僕も愛用している、ティフォンシリーズ。MILLETが2018年に打ち出して、そこから高透湿ブームの流れになって来た印象です。勝手な妄想ですね(笑)
実際売れているのか、TYPHONは今でも主力製品として、MILLETのレイン部門の一番上に置かれていますし、好日山荘とかでも良く見ます。
名前に堂々と50,000gと打ち出すだけあって、透湿性にはかなりの自信があるようで、実際に快適さは上々。
以前は2万ちょいとかでかなり破格でしたが、最近MILLETは値上げ傾向。元々がお得すぎた印象ですので、それでも悪くない価格。
エバーブレス(finetrack)
後に解説します、「A-1法」を公式が提唱する、唯一確かな透湿性で勝負するのが、ファイントラックとそのエバーブレス。
A-1法とかB-1法を知るはずのないユーザーが、透湿性にまつわる情報を知れるのも、このメーカーのおかげかもしれません。(B-1法とかは後で解説!)
一応疎水性多孔質PUに分類しましたが、細かく言えばこいつは、ポリウレタンではなく「ポリカーボネート系PU」。
なんのこっちゃって感じですが、一般的なPUよりも耐久性に優れるとのこと。ポリカーボネートは、車両・土木・船舶などにも使われるらしく、素材としても丈夫な高分子素材なんだとか。
僕にはさっぱり分かりませんが、ティフォンよりも耐久性のパラメーターを上げておきました。
その代わりちょっと高いですので、価格帯はMILLETに劣ります。
ナノファイバー系
続いては、最近人気のナノファイバー系。
人類が忙しくなったのか、トレラン系が流行っているのか、とりあえず最近は、ハイテンポなアクティビティも人気です。
そのニーズに合わせて現れたナノファイバーは、常識はずれの透湿性として、一旦注目された印象です。
何ならその透湿性は、1%くらいの通気性によるものですので、よりダイレクトな通気を感じれるかも。
FUTURELIGHT(THE NORTH FACE)
ノースフェイスがひそかに推している、フューチャーライトという素材。
基本的にMILLETのTYPHONと似たような感じにしておきましたが、コッチはさらに追加で透湿性を加えておきました。
この通気性の感じを見てしまえば、さすがに透湿性最強だろ、って思ってしまいますよ(笑)
パーテックスシールドエア
先ほどのFUTURELIGHTがTHE NORTH FACEのものに対し、こちらはGOLDWINのナノファイバー素材。
まさかノースの日本代理店のGOLDWINが、自分でも作っちゃうなんて。
高温多湿な日本がニーズに気付き、イイ物を作ってくれた感じです。
だけどイマイチ知名度が足りなかったのかな?、あまり普及していないイメージです。いいと思うのに。
ただどうしても、これら疎水性多孔質もナノファイバーも、PUなのでいつかは加水分解するものと思われます。
それでも昔よりは強くなったと思いますが。
【過大表現】透湿性が間違っている可能性
さっき触れました、「親水性向孔質PUに関しては透湿性に難あり」とか、「B-1法」とかについて、解説していきます。
これはあくまでいくつかのサイトで言われていることであり、僕も実感として正しいと感じることではありますが、各メーカー全てがコレに該当するかは分かりませんので、参考程度にとどめておいてください。
ですが役に立つとは思います。ここではざっと紹介しますが、詳しくは↓で。
透湿性の実験は2つある
一個はA-1法という実験で、もう一個はB-1法です。
よく透湿性20000g(※1)※1:B-1法を用いています。とか書かれているので、調べれば分かりますが、だいたいはB-1法を用いています。A-1法を用いているのはファイントラックくらいのもの。
さっきファイントラックの解説画像を載せておきましたが、画像を見ながらだと分かりやすいです。
A-1法は水蒸気が空気中で通過した量を計測するのに対し、B-1法は触れた水が水蒸気として通貨する量を計測します。
A-1法のイメージは実際だとこんな感じで、身体から出た水蒸気が出ていくことと実験は似ています。
B-1法はイメージするとこんな感じで、防水透湿素材に触れていなければ、B-1法の実験は成立しません。
水100%の水人間みたいな、ウォーターエレメントみたいな人間であれば、B-1法を再現できるかも(笑)
ともあれ極端な話、B-1法というのはアウトドアでは実現不可能で無意味な実験といえてしまうかもしれませんね。
※B-1法では高い数値が出るが、実着用ではかなり蒸れ感をおぼえる素材も多い(このような素材は、A-1法で測るとたいてい低い値しか出ない)
ファイントラック
上記がファイントラックさんのキビシーご意見。
僕が参考にしまくった、山と道ラボさんの情報でも、こういった傾向はバリバリに出ていました。
多分ですが、ワークマンとかのウェアが、個人的にはコレに該当していると感じます。
激しい運動だと8000g/㎡/24h??
よく言われているのが、激しい運動だと透湿性は1時間で1000gは数値としてほしいよ、とか、24時間で8000gだよ、とか。
だけどですよ、透湿性10,000gと書いてあるウェアを着て運動したとして、快適だった試しがありますか??
いわゆるワークマンのウェアとか、よくわからんアウトドアウェアとかです。
僕はそれで登山するだけでベチャベチャです。なんならちょっと動くと不快です。
つまり、公式数値はおろか、8000gも数値出てないんじゃあないでしょうか?
B-1法ですし。
所在不明(おそらくPU系)
透湿性の実験について語ったうえで、最後に謎防水透湿素材について紹介して終わりますね。
申し訳ないのですが、ここからはネット上いくら探しても、情報が見つからなかったものです。
とはいえ数値に拘らず、この中で既に信頼性を確立しているのは、PatagoniaのH2NOくらいでしょうか?
その他はゴアテックスは高くつくから、エントリー向けに安い独自素材を使っている、そんな恐らくPU系であろう、素材を紹介。
これらは特に古いものは、メルカリで加水分解している物が良く流通していますね。
H2NO(Patagonia)
Patagoniaにもゴアテックスはありますが、環境配慮の観点から、もとよりゴアテックス(フッ素化合物)採用はなんとなく避けていた印象を受けています。
そのためか、割と自社製品のH2NOが採用されていました。
と、まあここまでは良いのですが、どうやらこちらもPU素材のようでして、加水分解については以前より多くの報告が。
肝心の機能に関しては、数値が出ていないのでブラックボックスです!(笑)
とはいえPatagoniaに関しては、新たにePT(フッ素フリーGOA)をいち早く採用し始めたので、主力になってくるかもしれません。