メリノウールよりも安く、そして優れたインナーがあることをご存じですか?
そのインナーこそ、ジオラインと呼ばれるモンベルの化繊インナーです。
…と、申しましたが、実は半分嘘をついてしまって申し訳ございません。
半分の方はジオラインが優れると感じ
半分の方はメリノウールが優れると感じる
でしょうか。
双方似た機能を持つインナーですが、一体何が違うのでしょうか?
二つを比較してみましょう。
メリノウールについて
ジオラインを語る前に、まずはメリノウールについての解説をしていこうかと思います。
暖かい・汗冷えをしない・臭わない
というのが大きな特徴でしょうか、
なぜ暖かく、汗冷えしないのか?
ウールは吸水し、そして撥水する。
相反するように感じる特徴ですが、ウールは、繊維内部に吸水性があり、素早く汗を吸収してくれます。
半面、繊維の表面はウロコのような構造で撥水性があり、水分や水蒸気は外側へ逃がす性質があります。
ウール繊維内部に素早く取り込まれた汗は、表面の撥水性の働きでゆっくりと気化させます。
体が濡れた状態を防ぐことによって、汗冷えは防ぐことができます。
メリノウールには発熱性がある
スーパーメリノウールは非常に優れた「発熱性」を持っています。これは保温とは違い、水分を吸着する際に繊維自体が熱を発生する作用のこと。これを吸湿発熱と呼びます。ウールは保持できる水分量が多いため、発熱できる量がほかの繊維に比べ抜群に高いのです。
mont-bell
メリノウールには、その繊維自体に発熱性があり、体を動かしていない状態でも暖かさが得られます。
それゆえ、発汗量の少ないアクティビティや、普段着としても着用しやすいインナーとなります。
メリノウールの性能まとめ
ここでは、メリノウールの性能について
汗の吸い上げる能力を吸水性
水をはじく能力を撥水性
暖かさの理由を発熱性と表現しました。
ジオラインについて
ジオラインは驚異的な速乾性を発揮するため、ストップ&ゴーを繰り返すアクティビティや、発汗量の多い方におすすめです。非常に細かい繊維を厚みを出す編み方や構造を採用し、デットエアをたくさん保持できるように工夫しています。
mont-bell
ジオラインは、同社のモンベルのメリノウールと比較しても、速乾性により優れていると言われます。
メリノウールとジオラインを両方使用したことのある私の体感としても
速乾性の違いはすぐに実感できます。
ポリエステル繊維の速乾性
ジオラインの繊維はポリエステルでできています。
以下の写真はジオラインのものではありませんが、一般的なポリエステル繊維の写真になります。
ウールと比較してもシンプルな構造であり、パスタのような見た目をしていますね。
ポリエステル素材は、そもそも内部に水分を含みません。
これがメリノウールとの大きな違いとなります。
極細の繊維表面に水分を這わせるように吸着することで、素早く汗を吸い上げます。
モンベルのジオラインも通常のポリエステル同様
その繊維はほとんど保水しません。
繊維の表面には親水加工が施されており、汗の吸い上げ~拡散~蒸発という工程が素早く行われるようになっています。
この、保水しないというポリエステルの特徴が、メリノウールと比較しても、速乾性に優れる理由となります。
ジオラインには保温性がある
ジオラインには発熱性の有無は表記されていません。それゆえ、体感的にもメリノウールと比較すると暖かさは劣ります。
その代わりに、繊維間に体が放出した暖かい空気を逃がしにくいように設計されており
保温性が高い仕様になっています。
体感ですが、登山のように動き続けている場合は、体の暖かさを保持するため十分な保温性があります。
しかし、発熱性がないため、休憩中は寒くなりやすい傾向にあります。
上の写真は、ジオラインのものではありませんが、ポリエステルの繊維は人工素材ゆえ、形状にある程度自由度があります。
中が空洞になったものを中空繊維とよばれ、軽量化・保温性に貢献すると言われます。
表面積が増えることで、汗の吸い上げ~拡散能力も上がるものと思われます。
ジオラインの性能まとめ
ここではジオラインの性能について
汗を吸い上げる能力を吸着
表面の処理を親水
暖かさの理由を保温性と表現しました。
メリノウールとジオラインの比較
ここまでで、メリノウールは発熱性が高く、吸水速乾性にある程度優れるという特徴を持ち
ジオラインには保温性があり、速乾性により優れるという特徴があることが分かりました。
その性能を表にしてまとめます。
メリノウール | ジオライン | |
---|---|---|
暖かさ | 高い | やや高い |
速乾性 | やや高い | 高い |
使用例 | 汗の少ないアクティビティ | 汗をかきやすいスポーツや活動 |
吸水、そして気化させることでドライを保ち、発熱性により汗冷えを防ぐメリノウール
繊維が保水せず、素早く全体に拡散・蒸発させることでドライを保つジオライン
私は過去に両方を使用しており、汗をかきやすい体質であることから、メリノウールからジオラインへ買い替えをしています。
自分の体質と行うアクティビティのタイプにより選んでみてください。
メリノウールとジオラインの厚さ 選び方
モンベルのメリノウールとジオラインについては、それぞれ厚みが大きく分けて3種類
それぞれ「薄手」「中厚手」「厚手」があります。
ちなみに、筆者は汗かきで暑がりなので、スノーボードなどの冬のアクティビティから
1月厳冬期の3000m級のアルプスまでを、ジオラインの中厚手で使用しています。
メリノウール
薄手
薄手ながらも高い保温性を備えている。と表現されます。1年を通して使用できるモデルです。
とはいえ、薄手ですので、冬のアクティビティや雪山登山には心もとないです。
普段使いから、残雪期や秋のトレッキングなどに有効です。
中厚手
着た瞬間から暖かい。と表現されるモデル。雪山登山でも十分活用できるレベルだと思います。
冬の低山ハイクやトレッキングに有効です。
発熱性があるため、厳冬期のテント泊には、ジオラインの中厚手よりも快適に感じるかもしれません。
厚手
卓越した発熱性を誇る。と表現されるモデル。
おそらく、厳冬期の3000m級や南極大陸などを想定されて使用できるようにもなっています。
インナーとしては暖かさが最上級となるため、よほどの寒がりさん以外では
登山中などは暑すぎると感じる場合もあるかもしれません。
冬のアクティビティとしては、北八ヶ岳や、厳冬期の上高地など、登山以外のトレッキングを主に行う方にオススメです。
ジオライン
薄手
激しく汗をかくスポーツや夏場のウォータースポーツなどに活躍する。と表現されています。
筆者は春~秋の登山のインナーとして使用しています。
冬には保温性はかなり心もとなく感じます。
中厚手
適度な保温性を持ち、登山やスキーツアーなどに最適。と表現されます。
筆者が冬に使うモデルでもあり、運動中の保温性と速乾性のバランスが最も優れていると感じます。
ただし、休憩中の保温性については少々心もとないように感じられ
厳冬期の休憩中は、ハードシェルなどを羽織りたくなります。
通常は、テンポが良い方や、そこそこ汗をかく方の、低山登山~雪山登山に向きますが
筆者同様に暑がりの方は、厳冬期の登山にもオススメできます。
厚手
極寒地の着用を前提に、保温性を重視している。と表現されます。
保温性は高いですが、繊維自体は同じく保水しないので、速乾性については優れています。
そこまで暑がりではないが、そこそこ汗をかき、厳冬期の登山もしっかりと行う方にオススメです。
ジオラインもメリノウールも機能的!
メリノウール派の方には、冒頭の一言目は失礼しました。
ここまで読んで頂けた方は、メリノウールとジオラインの機能はしっかりと分かったと思います。
結局のところ、どちらも機能的なインナーであることは変わりませんね!
自分が寒がりか暑がりか、代謝が良いか悪いかなど、ざっくりとした選び方で
どちらかを選んでもよいかとおもいます。
どちらを買っても、結局使い分けをする場合もありますので、
あまり深く考えずに選んでみても良いのではないのでしょうか?
まずは使ってみて、どんどん登山に出掛けてみてください!